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【期間限定】律儀すぎる悪魔 -ある群発頭痛患者の半生- 【試し読み】 - クレイジーランナーの日本縦断!(*^〇^*)
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【期間限定】律儀すぎる悪魔 -ある群発頭痛患者の半生- 【試し読み】

 

みなさん、どうもどうもね。クレイジーランナーですよ。

この記事では、私の初の著書『律儀すぎる悪魔』を一部無料公開しちゃっています!

たぶん「期間限定」だと思われますので、ぜひこの機会にお読みください。

 

律儀すぎる悪魔

 

目次

 

試合開始

1回      千分の一の確率

2回      かりそめの平穏

3回      発症、群発頭痛

4回      終わりの見えない苦痛

5回      悪魔のステルス迷彩

6回      無色の花火大会

7回      ゴリゴリのギャルのラッキーセブン

8回      1つだけ変わらないモノ

9回      最後の1日

延長戦     私の命を燃やす病

あとがき    いま、戦っている貴方へ

 

 

試合開始

 

「プレイボール!」

 

人生は野球の試合に似ている。

ホームランで盛り上がることもあれば、三振ばかりでつまらないこともある。

僅差でヒリヒリする展開もあれば、大差となり試合途中で勝負が決まってしまうこともあるだろう。

 

7行くらい前にかかったプレイボールの声は、ある『悲運な男』に対する人生の開始宣告だ。

彼の人生には、とある仕掛けがなされていた。

彼が産まれる前に仕組まれたそのトラップカードは、人生がだいぶ進んでから発動することになる。

 

彼は生を受けた瞬間に〝自殺頭痛〟と呼ばれる、知る人ぞ知る奇病を与えられた。

『痛すぎて自ら命を絶つ』と言われているため、そんな蔑称で呼ばれている。

ネタバレすると、彼の人生は雨天中止の危機に瀕することになる。

 

あなたが手に取ったこの本の主人公は、1度しかない人生という名の大舞台で、ボロクソに負けることが運命づけられているのだ。

多くの人間が、自分の人生が5回表1アウトみたいな、中途半端なタイミングで終わるなんて考えたこともないだろう。

 

本当にそうだろうか?

試合が9回まで続くなんて、ママも神様も、ベーブルースだって保証してはくれない。

 

 

1回 千分の一の確率

 

1回表

 

「はんぎゃぁ、はんぎゃぁ」 

 

昭和末期の初夏、私は生まれた。 

元気すぎる3440グラム。

 

「なんでぇ、男じゃねぇけぇ!」

 

さんざんお腹を蹴ったにも関わらず、私は生まれる瞬間まで女の子だと思われていた。

ピンクのベッドや服ばかり用意する両親に対し、胎内からの抗議は伝わらなかったようだ。

 

「ほいじゃぁ名前は〝助清〟か〝虎熊〟だな!」

 

このファンキーすぎる命名は、母方の祖父による猛烈な反対で頓挫することになる。

 

さっきからうるさい男は私の父だ。

喉元に拡声器が埋め込まれていると言われれば納得するほどに声がデカい。

 

彼の性格上、私の名前を〝助清〟にするのは本気だったのだろう。

父はそういう男だった。

 

少し変わってはいるが、まったく普通の中流家庭。

私はそこで長男として生を受けた。

 

『犬走タリオ』

 

それが私の名前となった。

 

この赤ん坊が一般的な生活を送れなくなるとは、このときは誰も想像していなかった。

 

そう、私を含めて。

 

 

1回ウラ

 

くさい。

非常に天使くさい。

 

俺は明確に不機嫌な顔で『出生準備室』と書かれた扉を乱暴に開けた。

部屋の中にいた天使たちが一瞬こちらを向くが、すぐに視線を切って業務に戻る。

 

イージーに自己紹介しておこう。

俺は〝悪魔部・疾病課〟に所属している。

その名の通り悪魔だ。

いかにも人間がイメージしそうな、カッコいい角と大きな翼を持っている。

 

俺の仕事は特定の病を持った人間を担当し、命を奪うことだ。

ただし、死神のように能動的に命を奪うことはできない。

あくまで運命づけられた病に起因する死を待たなければならない。

悪魔の世界にも、厳格なルールが存在するのだ。

 

今日は俺の新しい『担当』が決まる日だ。

本来、わざわざ天使がいる緩衝地帯まで足を運ぶ必要はないのだが、この目で確かめたかった。

生まれる瞬間に千に一つの確率を引き当てた、不運な魂を。

 

「AOW-2983、アトピー性皮膚炎。」

「GZN-5578、膵臓がん。」

 

少しだけ偉そうな天使が魂の名前を呼び、そして運命付けられた『病名』を告げていた。

新人っぽい天使が、魂の手首に色付きのリストバンドを巻いていく。

 

魂は、力なく眠る人間の赤ん坊のような見た目をしていた。

色とりどりのリストバンドを巻かれて台の上を流れていく。

まるで人間界のパン工場のようだ。

 

人間たちは出生後に、このリストバンドの色に対応した病と向き合うことになる。

もちろん人間自身に見えることはない。

しかし、確かに運命付けられているのだ。

 

「CDR-5373、群発頭痛。」

 

コイツだ。俺の新しい『担当』は。

 

「なんだ?コイツ…。」

 

天使くさいので喋らないようにしていたのだが、つい言葉が漏れた。

他の魂と違い、やたらと脚を蹴り動かしている。

 

血のように真っ赤なリストバンドを巻かれ、騒々しい魂が流れていく。

俺は黙ってそれを見送った。

 

群発頭痛になる可能性は低い。

前述の通り千分の一だ。

病気の中では珍しい類だろう。

あの魂の運命は、悲惨と言わざるを得ない。

 

再会するのは、おそらく二十年ほど経った頃だろう。

今度の魂は、いったい何年持ちこたえられるだろうか。

 

早いこと諦めて、俺の寿命になっちまえばいい。

 

 

2回 かりそめの平穏

 

2回表

 

「タリオーーー!」

 

私は怒られていた。

誰にかって?

スイミングスクールの朝霧コーチにだ。

小学校5年生になり、運動系としては唯一の習い事である水泳のレッスンを受けていた。

 

ハッキリ言って、ちびっ子時代の私は運動センスが良かった。

運動会のクラス対抗リレーでは少なくとも補欠(クラスで4番目)には入っていたし、スケートも得意で速かった。

 

水泳も得意な部類だったのだが〝背泳ぎのクイックターン〟だけがどうしても苦手だった。

どう高く見積もっても、成功率は3割。

プロ野球選手の打率なら褒められたであろうが、朝霧コーチにとっては許されない成績だったのだろう。

 

「タリオーーー!ちゃんとやれーーー!」

 

童顔ショートカット(朝霧コーチ)の金切り声が響く。

平成初期だから許されたのだろうが、令和の時代には完全にアウトな指導方法である。

普段は優しくてかわいいのだが、私の背泳ぎのクイックターンにだけは厳しかった。

 

「おいーーー!なんでできないんだよう!!」

 

ターンを始めるキッカケを、天井の模様だけで判断しなければならないからに決まっているだろう。

クロールや平泳ぎのように、前方の壁を視認できるわけではないのだ。

 

あなたが私より水泳が得意なら笑ってくれればいいが、そうでないなら想像してほしい。

壁がどこにあるかもわからないのに、いきなり水中で回転してイメージ上の壁を蹴らなければならないのだ。

できそうだと思うのなら、次の週末にでも市民プールで試してほしい。

少年時代の私の気持ちがわかっていただけるだろう。

 

「できたじゃーん☆」

 

たまたま、背泳ぎのクイックターンが成功した。

朝霧コーチにニッコリ微笑みかけられ、私もニッコリしてしまった。

チョロいのは、ちびっ子のときから変わらない特性らしい。

 

こんな感じで、私の幼少期は比較的平和だった。

 

病気が発症する、青年期に比べれば。

 

 

2回ウラ

 

ヒマだ。

俺はヒマを持て余していた。

 

自室兼事務所のイスにもたれながら目を閉じ、仕事用の懐中時計を宙に投げてはキャッチを繰り返していた。

 

すでに担当の〝犬走タリオ〟が生を受けてから十年以上が経過している。

しかし、俺の出番はまだだ。

 

群発頭痛は、発症するのは二十代になってからがほとんどだ。

それまでは、なんの予兆も発作もない。

 

「ふぁーーーぁ。」

 

大きなあくびをしてから、俺はまた懐中時計で独りキャッチボールを始めた。

 

「今のうちに、普通の人生を楽しんでおくんだな。」

 

俺は、届くことのないメッセージを担当へ送った。

人間は、自分の未来に対して恐ろしいほど無頓着だ。

死はいつでもやってくるのに、まるでそのことを忘れて面白おかしく生きている。

本当におめでたい生き物だと思う。

 

しかし、だからこそ楽観的に生きられるのかもしれない。

これから自分の身に降りかかる痛みや苦悩を知ってしまったら、絶望して生きる気力を失ってしまうだろう。

眠たい人生を送るのは、人間が自分たちに施した防衛策なのかもしれない。

 

「慌てるな。時は必ず来る。」

 

俺はそう言って、束の間の眠りについた。

 

自分に言い聞かせるように。

かりそめの平穏を噛み締める、哀れな担当に預言するように。

 

 

3回 発症、群発頭痛

 

3回表

 

「お疲れさまでした!」

 

「あ、犬走くんありがとう。ゆっくり休んでね。」

 

私は夜勤明けで退勤しようとしていた。

時間は『11:56』、正午直前だ。

すでに4時間の残業をしていた。

 

私の勤務する〝信濃インダストリー〟は、長野県の諏訪市にある製造業の会社だ。

今年度から県内のトップ企業〝エイコーネクサス〟と提携し、新たな工場を建設した。

私だけでなく、多くの従業員が湯水のように残業時間を消費していた。

工場内には常に、学園祭前日のような焦燥感が充満している。

 

私はまだ2年目の駆け出し社員であったが、この新しい工場での新プロジェクトに参画していた。

 

当たり前だ。

私は常に同期の中で圧倒的な成績を残している。

もはや比べられる対象は同期ではなく、中堅社員の先輩たちになってきている。

多少の忙しさやプライベート時間の減少など、全く意に介していなかった。

 

「犬走くん、だいじょぶかい?顔色悪いみたいだけど…。」

 

私の上司になったばかりの〝風間係長〟が心配してくれている。

さすがの気遣いだ。

 

係長も他の事業所で結果を出し、この新工場へやってきた。

このプロジェクトが成功すれば、すぐに課長に出世するだろう。

 

「大丈夫です。ちょっと疲れがたまっているのかもしれないですね…。」

 

そう言って私は職場を出た。

しかし、この係長の心配は恐ろしいほど的中していた。

 

近頃なぜか、退勤時間に決まって激しい頭痛に襲われるのだ。

たぶん、長時間勤務と仕事のストレスのせいだろう。

少し休んで薬を飲めば治るはずだ。

そう考えていた。

 

しかし今日はどういうわけか、いつもより頭痛が激しい。

左側頭部に脈を感じる。

まるで左目の後ろ側に心臓が移動したかのごとく、激しく鼓動をうっている。

 

「なんなんだよこれ…。ふざっけんなよ…!」

 

左目が開かない。

あまりにも痛みが強いからだ。

手のひらで左目を覆うように抑えていたが、その手が濡れるのを感じた。

 

涙だ。

私の左目から、とめどなく大量の涙が流れていた。

 

駐車場まではわずか五十メートル程度の距離であったが、それがあまりにも遠く感じた。

運転できるだろうか?と心配していたが、これでは歩行することすらままならない。

私はなんとか車に辿り着き、シートに身体を収めることに成功した。

 

「痛ぇ…。マジなんなんだよこれ…。」

 

私は気付かないうちに、意識を失っていた。

 

 

 

…暑い。

喉がカラカラだ。

私はサウナ状態になった車の中で目を開けた。

 

完全に汗だくだ。

車の中で眠ってしまったようだ。

貴重なプライベート時間を失ったことに対して苦笑した。

早く自宅に帰ろう。

 

頭痛は治まっていた。

頭の奥の方で、激しい痛みの残りカスのような不快感が残っている。

なににせよ、治ってよかったという気持ちが大きかった。

 

ふと視線を向けた車内の時計を見て、私は唖然とした。

 

『15:48』

 

「は?」

 

つい、声が出た。

なにかの間違いじゃないのか?

 

信じられなかった。

私は3時間以上、車の中で意識を失っていたのだ。

 

仕事のし過ぎで、休みが足りないんだろう。

そうとしか思えなかった。

 

まだ、このときは。

 

 

3回ウラ

 

「やっときたねぇ☆」

 

俺は、意識を失った担当の顔を見ながら言った。

二十年以上待ったのだ。

喜びで口元がほころぶのを我慢できない。

 

たしか、今年で二十二歳だったはずだ。

群発頭痛の発作が出始める年齢としては、ごく一般的だろう。

 

俺は懐中時計に鎖でつながれたカギを〝頭痛発生器〟から外した。

そろそろ痛みを抜かなければならない。

 

頭痛発生器は、小型のオルゴールのような見た目をしていた。

俺の大切な商売道具。

コイツが群発頭痛患者を苦しめる元凶というわけだ。

 

この担当、『犬走タリオ』との長い付き合いが始まった。

俺には決まった時期・時間に頭痛を起こす義務がある。

それが悪魔課・疾病係としての務めだ。

 

いつまでかって?

コイツがじじいになるまで生き抜くか、痛みに耐えかねてギブアップするまでだ。

 

じじいの定義は人それぞれだが、一般的に四十代くらいで群発頭痛の発作は起きなくなる。

血管が伸縮性を失っていき、周囲の神経を圧迫しにくくなるからだ。

 

「いつまで耐えるかねぇ☆」

 

いつになく、俺は上機嫌だった。

やっとコイツの〝寿命〟を奪う機会を得たからだ。

 

俺たち悪魔部・疾病課に所属する者は、担当の寿命を奪うことで生きている。

奪った寿命がそのまま俺自身の寿命に加算される。

つまり、サボるヤツや仕事熱心じゃないヤツは死を迎えることになる。

悪魔でも、ゆるやかに寿命を消費するのだ。

 

ハッキリ言って、俺はこの仕事がキライだ。

くだらない日常に飽き飽きしている。

俺は他の怠惰な悪魔どもとは違う。

明確な目的意識を持って仕事にあたっているのだ。

 

この悪魔部・疾病課で圧倒的な成績を叩き出し、花形部署である『死神部・ノート課』へ転属するのが俺の計画だ。

 

正直に言おう。

俺はノート課のヤツらが羨ましくてしょうがない。

アイツらは名前を書くだけでいつでも人間の寿命を奪えるし、最近は人間にノートを与える遊びが流行っているらしい。

 

優秀な人間をノートの所有者に仕立て上げ、挙句には『死神の目』を高額(寿命の半分)で取引して儲けを得ていやがる。

腹立たしいが、上手いやり方だ。

 

しかも、人間界で〝映画〟という娯楽作品にちゃっかり出演しているヤツもいるらしい。

俺はそこまでビジュアルに恵まれているわけではないが、翼は大きく立派だし、角も適度にねじれていて禍々しい。

人間たちにとっては見栄えのする悪魔だろう。

ハッキリ言って、俺も映画に出てみたい。

とにかく、ちまちま人間の寿命を奪う疾病課の仕事にはうんざりだ。

絶対にノート課へ行って、チヤホヤされながら寿命を吸いまくってやる。

 

そのためには、とりあえず目の前の担当を絶望させなければ。

 

俺の担当は、激痛の残滓に苦しみつつも意識を取り戻しつつあった。

そうだ、開眼し絶望の世界を取り戻せ。

 

さぁ、諦めろ。

1秒でも早く。

 

 

残念、ここまでですよ!!(非情)

 

ここまでお読みいただきありがとうございます!

この本は私なりに、群発頭痛患者として生きた半生を生々しく描いてみました。

悪魔のターン(ウラ)については、『こんな感じだったんじゃね?』と想像して書きました。つまり、半分ノンフィクションって感じです。

 

この後の『4回』以降、どんどんと地獄のような災難が真面目サラリーマン・犬走タリオさんに降りかかるわけなのです。

続きが気になる方は、ぜひ本書をご購入下さい。(圧)

 

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