光は突然射した。思わぬ方向から、”思わぬ人”によって。
【回想】サラリーマン犬走の転機
私は自宅にいた。時刻は午後4時。平日であり、本来なら会社にいる時間だ。しかしこの日は正午前から激しい頭痛に襲われ、午後は半日休暇をもらうことにした。午後は取引先と打ち合わせをしていたのだが、仕方がない。課長に出世して久しい上司、風間課長に代役をお願いして帰宅した。
『犬走くん、ちゃんと大きい病院で診てもらった方がいいんじゃないか?君の頭痛は並みの症状じゃない。頭の病気は怖いからね。最善を尽くした方がいいよ。』
風間課長の言葉が蘇る。まったく、おっしゃる通りだと思う。
私もたくさんの病院で診察を受けてきた。内科にかかったこともあったが、ほとんどの場合脳神経外科で診察を受けた。何度も脳の輪切りの写真を撮ったが、異常は見つからない。毎回『片頭痛』とカルテに文字が書かれるのを見てきた。本当にこの激しい頭痛は片頭痛なのだろうか?
私が激しい頭痛に見舞われるようになってから、実に11年の月日が経っていた。私も、ただ黙って痛みに耐えていたわけではない。自身の病状を調べていた。その中で気になったのが、”群発性頭痛”という病気だ。周期的に激しい頭痛が起きる病気らしい。私の症状にピッタリな気がしていた。しかし、今まで病院で群発性頭痛を疑われたことなど一度もなかった。
ふと、眠気が私を襲う。頭には頭痛の残滓が残っていた。少し、眠ってしまえば楽になるだろう。
電子音が聞こえる。電話の着信音だ。私の眠りを妨げた犯人の名前を確認する。
19:22 着信中 【あーたん】
我が愛する恋人、ゴリゴリのギャルのあーたんだった。
『あれ、寝てたの?ごめんねー。』
まったく謝っているテンションに聞こえないのだが、それは誤解だ。彼女は彼女なりに私のことを心配しているし、気を遣ってくれていることは理解していた。
『てゆーか、”あやっちょ”に聞いたんだけどー、頭痛外来のある病院じゃないと群発性頭痛なんて診断されないらしいよ?』
ん?この子は何を言っているんだ?一瞬思考が追い付かなかった。が、すぐに理解した。あーたんは私の病気について調べてくれていたのだ。以前、自分の症状が群発性頭痛じゃないかと疑っていると伝えた。それを覚えていてくれたんだろう。
あやっちょとは、あーたんの高校時代の友達だったはずだ。聞くと、現在は松本市の脳神経外科で看護師をしているという。この恋人からの短い電話が、私のその後の人生を大きく変えることになった。
私は病院にいた。事前に確認した、頭痛外来のある病院だ。そこで自分の症状を、なるべくわかりやすく簡潔に伝えた。
『典型的な、群発性頭痛だねぇ。』
先生はそう言った。とうとう、とうとう判ったのだ。私を11年も苦しめ続けた、悪魔の正体が。
あとできつく抱きしめてあげよう。これはあーたんの、伝説的スーパーファインプレーだった。
【重要】正しい診断を受けるために
ゴリゴリのギャルあーたんのスーパーファインプレーで、とうとう群発性頭痛と診断されたわけです。今思えば、感謝しかありません。本当にラッキーでした。
正しい診断を受ける上でなにが重要だったのか?振り返ってみたいと思います。
①発作の記録を残しておく
頭痛の起こり方を記録しておくことは重要です。
- どの季節に?
- どのくらいの期間?
- 何時ころに?
- どのくらいの強さで?
というように、記録を取っておきましょう。お医者様に説明しやすいし、自分の群発性頭痛の特徴を理解することができます。
②同じ病院に通院する
これは超重要です。私は激しい頭痛が起きた時に、最寄りの病院に行くことが多かったです。なぜなら、痛みが強すぎて重篤な病気を疑ったからです。悠長に、遠くの病院に行くような余裕がなかったんです。
かかりつけ医を作ることは重要です。何度も症状を伝えることができていれば、もっと早く群発性頭痛を疑ってもらうことができていたかもしれません。
③頭痛外来のある病院に行く
これは超重要です。(2回目)インターネットで調べれば、頭痛に強いお医者様かはすぐにわかります。事前に調べてから通院するようにしましょう。
【まとめ】診断はスタートラインである
群発性頭痛の治療において、正しく診断されることは重要です。最も有効な薬を処方してもらうことができますし、精神的な余裕も生まれるからです。
しかし、正しい診断を受けたからと言って即座に楽になるわけではないのも事実。正しい診断とかかりつけ医を作ることは、あくまでスタートラインにすぎないのです。
【次回予告】診断を受けたあと、どう生きるか
残念ながら、群発性頭痛は完治することがない。正しい診断を受けたところで、発作をなくすことはできないのだ。群発性頭痛患者として生きること、その本質とは。
次回更新を待たれよ!
コメント